平成28年度総括研究報告書

各地方公共団体における墓地経営に関する情報共有のあり方に関する研究

平成29年3月

研究代表者 浦川 道太郎
公益社団法人 全日本墓園協会 特別研究員(早稲田大学 名誉教授・弁護士)

総括研究報告書/関連資料

関連資料


4-3 よくある質問 キーワードの抽出過程


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よくある質問(FAQ)のための作業関連(2)(FAQ の具体例)

関連資料 4-3_よくある質問(FAQ)のための作業関連(2)

Q1-12;[墓埋法第26 条における「みなし墓地」の管理と再貸付け]


「墓地、埋葬等に関する法律」第26 条における、いわゆる「みんし墓地」の管理者が、墓地区域内の整地を行い、その空いたスペースに墳墓を設置するような場合、新たな許可が必要とされるのか。(都道府県の職員より)《18》

A1-12;墓埋法第10 条第2 項が適用され、新たな許可が必要です。同項では「区域を変更しようとする者」と述べられていますから、仮に、全体の面積が変わらなくても許可が必要です。ご質問のケースでは、墓地内の整備にとどまらず、建てられる墳墓の基数も変更される内容なのですから、当然新たな許可が必要とされます。


Q1-54;[共同墓地の土地所有権の当該墓地管理組合への委譲の可否]


明治 22 年に登記変更(地目を「畑」から「墓地」)した集落の墓地がある。登記の名義は「1G 氏外30名」となっている(「外」とされた30 名について、具体的には不明)。現在、墓地は東側に拡大しており(ほぼ1,000 ㎡)、そこはNA氏の所有地となっている。NA氏は4 年前に亡くなっており、その遺族は当該地を手放したいと考えている。ところが、墓地は任意の組合によって運営されていることから、当該地の受け皿として適切か否か判断に迷っている。NA氏の遺族は行政(市)に譲り渡したいとの意向のようであるが、どう対応したらよいか。(都道府県の職員より)《26》

A1-54;任意の組合となると、土地の譲渡を受け、権利行使することは出来ませんので、実際にはMG氏を組合代表者として、対応せざるを得ません。行政(市)が譲り受けるということも一案ではありますが、その場合は、あくでも金員のやり取りを前提としない無償の受領でなくてはならないでしょう。何故ならば、既に特定の限られた受益者(墓地使用者)によって占められている土地を、行政(市)が有償で買い取ったことになると、既存の墓地使用者に対して便益を図ったことになってしまうからです。
後述のA1-60 も参考として下さい。


Q1-60;[名義上「公営」となっている集落墓地の整理]


墓埋法以前からある公葬地(集落墓地)の取り扱いで悩んでいる。台帳上は市営となっていながら全く関与しないものや、寺院墓地であっても台帳は個人名のままとなっているものなど様々で墓埋法第26条だけではこれらをどう整理したら良いか分からない。何らかの方向性だけでも示して頂ければ大変有難い。(市町村の職員より)《27》

A1-60;最もポイントになるのは、当該墓地を実質的に使用しているのは誰か、ということになります。
こうした墓地が形成されるに至った背景の多くの場合、墓地近隣に集落が形成されたことが前提となっているはずで、こうした場合の墓地(墓所)使用権は、法律上、入会(いりあい)権的な性格を帯びたものと位置付けられることが一般的です。このような場合は、その集落では、行政的な性格を帯びた紐帯によって、各々の世帯が、ある種の社会関係を構築しているはずです。そうした社会関係における代表者や、主たる構成員に対して、墓地を管理する組合をつくるように働きかけては如何でしょうか。無論、何らかの動機づけ(モチベーション)を与えなくてはなりません。そこで選択し得る方策、制約は、地方公共団体によって様々でしょうから、その選択肢をあえてここで述べることは差し控えます。
また、ご質問では墓地の使用者と墓地がある土地の所有権との整合性については明らかにされていません。集落の共同名義になっているか、分筆はされていても、各々の所有者が墓地使用者と一致していればよいのですが、そうした集落や墓地使用者とは全く異なる者が所有者である場合には、これまで黙認していたものが、墓地の管理体制を整備することに対して抵抗感があり、思わぬ形でトラブルとなってしまうことも考えられます。
以上、個々の事案における状況が明らかではないため漠然とした回答になってしまいました。これ以上踏み込んで申し述べ難いことをご賢察下さい。


Q1-101;[自治体所有の墓地の管理と合葬墓について]


次の2 点につきご教示願いたい。
(1)「ポツダム政令」により自治体所有となった墓地の管理について
①当該墓地の管理は、元来の所有者である地元に一任しているが、経営主体としての自治体の責任についてどう考えたらよいか。
②区画の整地や土地改良等、市の施策により移転した墓地の地盤が沈下した場合、市の責任についてどう考えたらよいか。なお、移転後、30 年は経過している。
(2)合葬式墓地のあり方について
①合葬式墓地いついて、多くの自治体では納骨後30 年経過後に合葬しているが、30 年の根拠はあるか。
②生前契約した合葬墓に、死後、誰が納骨するのか。故人の意思を周囲の人が知らなかった場合はどうするか。(市環境衛生課担当者より)《34》

A1-101;ご質問ごとに回答します。
(1)自治体所有の墓地の管理について
① 自治体の管理責任
ご質問の内容だけでは、当該墓地の経営主体である貴市が、どのような問題について責任を問われているのか不明です。(Q100)の回答を参考にして下さい。
② 市の施設により墓地の地盤が沈下したと考えられる場合
これは、本来は自治体が負うべき責任ではなく、整地や土地改良等を行った施工業者の業務の過失責任が問われる事案ですが、30 年以上前の事柄ですので、工事の瑕疵があったことを立証することがかなり困難であることを考えると、修復・復旧等は自治体で行わざるを得ないのではないかと思います。
(2)合葬墓について
③ 納骨後 30 年経過後合葬している根拠
30 年とする根拠は特にありません。おそらく、わが国の場合、「三十三回忌」をもって「弔いあげ」、「骨あげ」とし、個人の祭祀の区切りとされ、その故人は「ご先祖様」するという慣習がありますので、こ うしたことを根拠に踏まえてのことだと思います。ちなみに、当協会が把握している限りでは、20 年としているケースが多いようです。これはおそらく民法162 条「所有権の取得時効」に規定されている「20年の間、平穏か公然に物を占有してきた場合には、占有者がその物の所有権を取得する」という考え方を踏襲するものだとも考えられます。ただし、この考え方も司法上適正と認められた厳密な意味での法的解釈ではなく、目安でしかありません。
④ 生前に契約した合葬墓に、死後、誰が納骨するのか
この問題は、むしろ、契約者が考えておくべきではないかと考えますが、通常は、申請時に、申請者が死亡した時に焼骨の埋蔵を行う者を指定することが一般的ではないかと思います。これを「指定人」と称する場合もあります。ところで、ある市の説明資料には、指定人または身寄りの方が亡くなった場合には、指定人の代わりに、当該市が納骨しますと書かれてありました。ただし、申請者死亡の情報をどのようにして入手するのかについては触れられておりませんでした。


Q1-109:[無許可で経営していた納骨堂の競売と焼骨の改葬について]


某宗教法人が無許可で納骨堂を経営していたことが、この宗教法人が破綻した後に、破産管財人の弁護士からの相談を受けたことにより発覚した。当該施設には50 基ほどの焼骨が残っており、破産改財人に対し、遺族に返却するよう指導しているが、破産法人の元代表役員に連絡がつかないことを理由に、非協力的である。今後、当該物件について競売が行われるが、仮に、当該物件を買い受ける者が出た場合、買受人は、無許可納骨堂の経営者となるのか。また、当該物件から、残っている焼骨を適切に移動させる方法があれば、ご教示願いたい。
なお、破産管財人名義で、無縁公告を行い、焼骨を受け入れてくれる寺へ、改葬するという案もでたが、当該施設が無許可施設であるため改葬には当たらず、この方法は不可と考えるが如何か。(市健康薬務課担当者より)《36》

A1-109:まず、破産管財人の弁護士から相談を受けるまで、この事実が発覚しなかったことが問題です。このケースは、単に墓埋法違反だけでなく、農地法や都市計画法、建築基準法などの関連法令にも抵触しますし、さらには、使用者を募り金員の受け取りを行っていたということで、詐欺罪での立件も可能であったと考えられます。しかし、現時点では、告訴する相手側が行方不明ということですので、ご質問に限定して回答します。
ご質問から判断すると、無許可の納骨堂を納骨堂として競売に付すようですが、順序としては、残された焼骨を移すことが先決です。しかし、焼骨を他に移したとしても、墓埋法違反としての対応を目的として、当該物件は、納骨堂ではなく、単なる建造物としての競売となるでしょう。
ところで、残された焼骨については、一律に無縁焼骨として処理することはできないので、破産管財人名義による無縁公告を行い、縁故者が現れれば個別に処理し、最後まで残された焼骨は、墓埋法施行規則第2 条2 項1 の「市長村長が必要と認めるこれに準ずる書面」を準用し、他の書類によって、無縁改葬手続きを進めることです。


Q5-10;[公営墓地が新たに管理料を徴収するにあたって]


市営墓地の取扱について。既存の墓地で新しく空き墓地の追加募集をするのに伴って、全ての使用墓所区画より、管理料を徴収したいと考えている。その際、必要なこと(条例改正、周知方法等)を知りたい。(市町村の職員より)《18》

A5-10;ご質問では「必要なこと」として「条例改正」「周知方法等」が挙げられています。しかし「条例改正」については「どの様な内容の条例としたら良いのか」を問われているのか、「条例改正の手続きはどのようにするのか」を問われているのかが判然としません。
もし、後者であるなら、貴市で定められている条例制定の手続きに照らし、最終的には議会での議決を経て、制定なされたらいかがでしょう。
前者の場合であれば、管理料を徴収している市営墓地に問い合わせて、その市における条例を参考にされればよろしいのではないのでしょうか。ここでは幾つかのポイントを列挙してみます。
まず、条例では、「管理料を徴収する」旨についてのみ定め、管理料の額や徴収方法などについては、「別途定める」として、施行規則等で扱った方が良いでしょう。管理料の額や徴収方法については改正、変更されることが少なくないからです。
なお、管理料の設定は、慎重に試算すべきでしょう。園内の植栽、清掃費用、園内設備の維持などの他、管理料の徴収自体の経費についても忘れてはなりません。
次に「周知方法等」についてですが、改正した条例等については通常、「○○市だより」などといった広報紙を通して伝達することが一般的でしょう。しかし、これまで管理料を支払わぬまま今日に至った現使用者に対しては、特に綿密な周知の手続きが求められます。そうした手続きを経ることで、所在不明の使用者も明らかになるでしょう。
最終的に所在不明の使用者に対しては、使用許可を取消すとともに無縁改葬の手続きを粛々と進め、整理を行わなくてはなりません。


Q5-23;[管理料を徴収してこなかった公営墓地が新たに管理するには]


本市においては、昭和22 年から管理している市営基地があるが、今まで管理料は徴収していない。今後管理料の徴収を検討しているが果たして、途中から新たに管理料の徴収することは可能であるか。ちなみに、その他の墓地についても全く管理料の徴収は行っていない。(市町村の基地主管関係者より) 《24》

A5-22;管理不足による赤字など、現状の厳しさを有り体に説明し、適切な管理料支払いの協力を求めるほか無いと思われます。
一般的に「永代」という言葉は仏教上の用語が敷延されたものであり、法的な定義を受けたものではないとされています。だからといって20 年程度の経過をもって失効というような一律な扱いによって、この問題を処理することは出来ません。契約においては「事情変更の法則」があり、①当事者の責めに帰することが出来ない場合、②契約当時にあっては当事者が予想も出来ない場合、③著しい事情の変更が生じた場合に限って、信義・衡平の見地から契約内容の改訂・解除が認められますが、ご質問のケースが、これに該当すると判断するのは極めて難しいことであるように思われます。
昭和40 年前後に開園した民営霊園のなかには、開園当時の資金繰りの困難な状況下で、永代管理料として一括前納の方式を実施したケースが見られます。それらの霊園のその後の状況を、代表的な3霊園について調査したところ、次の様なものでした。
A 霊園:当初数年間実施。期限の定めのない永代管理料なので、契約上、直系親族の承継に限り永代管理としている。
B 霊園:当初数年間実施。計算上、20 年間分の管理料分の一括前納であるが、契約上は期限の定めのない永代管理料金なので、20 年を過ぎた時点で承継者交代の都度、説明していたが、はかばかしくないため、最近対象者全員に窮状を訴えたお願い状を出し、効果を上げている。
C 霊園:開園当初、非公式に10 年、20 年、30 年、50 年として一括前納をお願いしたケースがある。
期限が明確になっているため、その時点で解消している。
ご質問のケースは20 年分であることを謳っていますが、永代管理であることを強調したかたちになっていますので、B 霊園に倣い、財政的に圧迫となっていることを切々と訴えて納得してもらう努力を続けるしかないのではないかと思います。ご質問で、は、貸し付け済7,500 基のうち後期貸し付け分の3,500 基については年間管理料として徴収しているとのことで、現状ではこれら後期貸し付けの使用者の管理料によって霊園全体が維持されているということになりこのままでは後期貸付の使用者に対する信義上の問題も発生してくると考えられますので、早急に着手し、根気強く解決していくことが望まれます。


Q7-17;[公営墓地における条例に基づく使用許可取り消し]


講習会で「(公営墓地において)条例による使用許可の取り消し事例は無い」との説明があったが、実際に多くの公営墓地で無縁改葬が行われているのではないか。 次に墓所区画の使用許可はなされても、焼骨の埋葬は無論、墳墓の設置さえ行われていない場合、これは祭祀財産と言い得るのか。こうした墓所区画について、返還の申し出がなされ、いわゆる「返還金」が支払われた場合、これは「相続財産」になるとも思われるが、どう考えられるか。(公営墓地の職員より)≪22≫

A7-17;講義後の質疑応答の際に、「(公営墓地において)条例によって使用許可を取り消した事例は無い」という説明がありましたが、この主旨は、「公営墓地は条例や規則によって、使用を許可されている。 従って、その使用権の取り消しに、施行規則第3 条に定める無縁焼骨の改葬手続きに拠らず、条例や規則に基づいて対応することが出来るはずであるが、そのような事例はない」というものです。
論理的には成り立ち得る考えかもしれませんが、現状では条例や規則による使用許可の取り消し(聴聞委員会の開催など)と、墓埋法施行規則に基づく無縁焼骨の改葬が並行して行われているのが一般的で す。
次に後者の問題については、墓所区画に墳墓が建立されていない状態は単に使用権が設定されているだけであって、祭祀の対象とは言い難く、あえて言えば、祭祀を行うための権利・財産になります。 墓所区画の返還に伴って返還金の支払われた場合、それがどの様な性格の「財産」になるのかについては、税務当局が判断すべきことでありますが、仮にこれが相続財産に該当するとしても、相続に伴う課 税について議論がある程の額だとは思われません。


Q7-22;[無縁改葬後の焼骨を合葬するには]


当霊園では、3 年以上墓地管理料が支払われない場合、使用規制に則り、当該墓所区画を更地にする旨、当該者に郵便配達証明を送付するなどして、再三にわたり連絡しているが、回答を得られない使用者が 増えている。止むを得ず、当法人の使用規則に則り、墓地の幾つかを更地にしている。 しかし既に遺骨が埋葬されている場合も多く、遺骨の保管に苦慮している。当霊園の無縁墓に合葬することを考えているが、以下の点をお尋ねしたい。

1.使用者から遺骨の返還を求められた場合、返還しなければならないのか。
2.その場合、保管期間が義務付けられているのは何年間なのか。
3.合葬した場合、返還が不可能になってしまうのであるが、その場合に罰則は定められているのか。(宗教法人営墓地責任役員より)《24》

A7-22;管理料未納者に対して、使用規則又は契約約款に基づき、使用許可の取消し又は契約解除を行っていることについて、当協会会員霊園を対象に実態調査を行ったことがあります。調査の結果では2割近くが、実績ありと回答していますが、実際に無縁墳墓としての事務処理は使用権の取消し又は解除してから、数年も経過した上で合祀墓等へ改葬をしているところが多いようです。この場合、無縁改葬の手続きは、いわゆる施行規則3 条により行われていれば、改葬後の焼骨の処置について問題はありません。
かつて、ある公営霊園では規則第3 条による無縁改葬後、焼骨は合祀墓に納め、墳墓は別に保管していたこともあった様です。しかしながら、焼骨については引取りを申し出てきたケースはあったものの、墓石については申し出がなく、現在では適時処分しているということでした。したがって、焼骨については直ちに合祀してしまうのではなく、一定期間できれば10年程度は個別に保管しておく方が問題は生じないと思われます。
なお、ご質問では「使用規則に則り、墓地の幾つかを更地にしている」とありますが、施行規則第3条による無縁改葬手続きを行わずに勝手に改葬し、更地にしているのであれば問題です。




以 上





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