平成28年度厚労科研費研究に伴う

「墓地の経営・管理に関するFAQ」

  FAQ記載の参照番号は、墓地管理士通信教育テキストの番号に準じております。


「墓地の経営・管理に関するFAQ」


サイト内キーワード検索:上部窓にキーワードを入力して検索してください。


FAQ 4.埋蔵・分骨・改葬などを中心とした問題


Q1.[墓所に納骨できる(親族の)範囲]に関する質問

当墓園では墓地の管理規則の上で、1墓所1家系を原則としており、納骨できる親族の範囲を限定して取り扱っている。たとえば、名義人の弟の遺骨については、その弟が未婚、もしくは子供がいない場合などを除き、原則として納骨を認めていない。
しかし、実際には、名義人の承諾があれば、広く納骨を認めてほしいという要望があるなど、対応については苦慮している。どのように対応したらよいか。

Answer

代表的な墓園に管理運営の実際を問い合わせたことろ、おおむね①特に範囲を限定せず、使用者の同意を得たものについては全て認めている、②親族以外の埋蔵には、別途その旨の申請書を提出させ、これを検討した後、ケースに応じて認めている、に大別されます。
また②で言う「親族」については、民法が規定するところの「6親等内の血族および配偶者、3親等内の姻族」という定義に拠っている場合、あるいは、「直系血族及び配偶者」「2親等以内」といった基準を設けている場合など様々なケースが見られます。
実際の墓地使用規則においては、①の「特に範囲を限定しない」としているケースが多いように見受けられます。しかし、制限なく認めていては、「他人から委託を受けて焼骨を預かる施設」として、許可が必要とされる「納骨堂」のようになってしまう懸念があります。
また、使用規則において「埋蔵の範囲」が特に定められていなくとも、直ちに「使用者の希望する埋蔵が認められる」ことを意味しません。ほとんどの規則には、「焼骨の埋蔵は管理者の許可が必要である」といった旨が、明らかにされており、これを適用すれば、埋蔵の範囲についても適切な指導をすることが可能です。
また、②のように「埋蔵の範囲」が定められている場合であっても、事務的な処理で済ませる訳にはゆきません。ご質問のケースの場合、兄とは別に弟が世帯を形成していたような場合はどうなるでしょう。兄弟が仲良く一つのお墓を使っていたとしても、兄弟の死後、遺された各々の世帯の間で、様々な問題が生ずることは十分に考えられます。
ですから、埋蔵の範囲については、何らかの基準を設けた上で、個々の事例毎に充分な検討を行うべきではないかと思います。墓園によっては、「墓所の使用名義人が主宰する祭祀の下に置かれる」という旨を明記した書類の提出を求めているケースもあります。後日のトラブル防止という点で、参考になる方策の一つだと思います。
ただし、埋蔵の範囲をあまり制約して考えてしまうと、承継時のトラブルが避けられる反面、無縁となり易くなってしまうという可能性も考えられます。

参照:Q4-18

Q2.[無届けで埋葬された遺骨の改葬]に関する質問

公営墓地に、数十年前に無届けで埋葬されてしまった遺骨を、他の新規の墓地に移転改葬をしたいとの申し出があった。しかし、既に埋火許可証も無く、記録の保存年限も経過し、再発行出来ない場合、改葬に必要な埋蔵証明書、改葬許可証を発行する上で、一体、どの様な手続きをすれば良いのかご教示願いたい。(地方公共団体(市)営墓園より)

Answer

改葬の手続きについて誤解をされておられるようです。改葬許可では再発行という性格のものではなく、全く新しい手続きでもって交付される許可証です。
A4−15と重複しますが、改めてその手続きについて述べます。
施行規則5条1項に「墓地等の管理者は、他の墓地等に焼骨の埋蔵又は収蔵を委託しようとするものの請求があったときは、その焼骨の埋蔵の又は収蔵の事実を証する書類を、それに交付しなければならない」と定めてありますので、当該焼骨が現に埋蔵されていることが確認出来るのであれば、その書類(=埋蔵証明書)を改葬許可申請者(原則として当該墓所区画使用者)に渡さねばなりません。無論、「無許可で埋蔵された焼骨について、書類の交付は出来ない」といって対応することも可能です。
しかし、施行規則2条2項一号では「埋蔵又は収蔵の事実を称する書面の添付がより難い特別の事情がある場合は、市長村長が必要と認めるこれに準ずる書類を(改葬の許可を受けようとする者が)用意しなくてはならない」とありますので、仮に墓地管理者が埋蔵証明書を交付しなくても、この条項に基づいて改葬許可証が交付されることも考えられます。同許可証が交付された場合には、墓地管理者はこれに抗することは出来ません。

参照:Q4-33

Q3.[埋蔵証明書の交付を拒否された場合の改葬手続きについて]に関する質問

ある寺院境内墓地から、他の墓地に移りたいと考えている方がいる。しかし、その寺院の住職との関係がこじれ、離檀料を支払わなければ埋蔵証明書を交付しないと言われた。この問題を市に照会したが、「とにかく、埋蔵証明書が無ければ改葬許可証の交付は出来ない」と言われた。改葬許可証を交付してもらう方法はないか伺いたい。(石材業者より)

Answer

ご質問の通りの応対がなされたのであれば、当該市の担当者の対応は誤っております。墓埋法施行規則第2条第2項において、改葬の許可の申請には、「(前略)管理者の作成した埋葬若しくは埋蔵又は収蔵の事実を証明する書面」が必要であるが、「(これにより難い特別の事情がある場合にあっては、市町村長が認めるこれに準ずる書面)」と明記されております。また、昭和30年2月28日衛環第22号の通達「墓地改葬許可に関する疑義について」においても、「墓地管理者(ご質問における住職)は納骨の事実の証明を拒むべきではないのであるが、もし拒んだような場合には(中略)これにかわる立証の書面をもって取り扱って差し支えない」と述べられています。ここでいう「書面」は、「当該市町村長が必要と認める書面」とされていますので、具体的には、例えば、故人の死亡を証する除籍簿とか、故人と改葬申請者の関係を証する戸籍等の公的資料や当該寺院に埋蔵されていることを明らかにする書面、その他、住職とのやり取りの経緯を記した説明書などが考えられます。
この問題は、単に墓埋法の問題にとどまるものではなく、この住職が、埋蔵証明書の交付権限を利して、改葬したいという申請者の「信教の自由」を阻害しているとも考えられるものであり、このケースでは、行政は、そうした憲法で保証されている権利侵害の現実を是認していることに他ならないのであって、行政には、こうした点も強く主張すべきでしょう。

参照:Q4-40

Q4.[無縁墓のカロートが一杯になった場合]に関する質問

公営墓地における無縁墓のカロートが一杯になったので整理したい。どのような手続きを行えばよいか。 (市民生活部環境課担当者より)

Answer

ご質問は、公営墓地における無縁墓についてですので、規模の大きいある公営墓地に、無縁墓のカロートが一杯になった場合の対応について問い合わせてみました。
その霊園では、「墓地等の構造設備及び管理の基準などに関する条例」において、「無縁の踵骨を発掘し、又は収用したときは、一体ごとに陶器等不朽性の容器に納め、その容器には、死亡者の氏名、死亡年月日及び改葬年月日その他必要な事項を記載しておくこと。」と定めてあるそうですが、保管期限が規定されていないため、例えば、保管スペースが狭くなったので、骨壷から布袋に移し替えるというわけにはいかず、新しく無縁墓を増設するしか方法はないということでした。
しかし、墳墓のカロート内に焼骨をどういった形、方法でおさめるかについては、地方によって慣習は様々であろうと思います。当該墓所の狭さから、埋蔵する焼骨がカロートの容量を超えた場合は、骨壷から焼骨を取り出し、カロート内に撒いてしまう方法や、一部は骨壷におさめ、他はカロート内に撒いてしまう方法、あるいは、骨壷から取り出し布袋に入れ替える方法などがあります。条例や使用規則・約款などの拘束がない限り、どのような方法を取るかは、当該墓所の使用者(管理者)の考え方に委ねられます。
したがって、貴自治体において、現在、そのような規則がないのであれば、墓埋法の目的である、国民の、とりわけ、ここでは貴市住民の慣習や宗教的感情に配慮しつつ、適切な整理方法について規定すればよいのではないかと考えます。

参照:Q4-43

Q5.[分骨、改葬、土葬に対する疑問]に関する質問

次の3点につきご教示願いたい。 (市緑化推進課担当者より)

Answer

ご質問ごとに回答します。

  • (1)分骨に関して
    分骨に関する手続きは、墓埋法施行規則第5条2項に規定されておりますが、必要な書類の様式は定められておりませんので、墓地等の管理者は、任意に、分骨すべき焼骨は、確かに当該墓地にあるという事実を証する書面を発行することが一般的です。この書類を「分骨証明書」又は「埋蔵証明書」と称しております。
  • (2)改葬に関して
    ・本籍、住所、氏名等が不祥の場合
    分骨の場合と異なり、改葬については様式が定められておりますが、本籍、住所、氏名等欄が不祥となっていたとしても問題はありません。但し、申請者からは書面により、不詳となった経緯について説明を求め、その理由が適切であると判断をした場合に許可証を発行すべきでしょう。どういった理由が適切か否かについては、個別の事案で考えなくてはなりませんが、その説明が合理的であり、かつ、他の法令に照らし合わせても違法性が認められない場合が、ひとつの基準になると思われます。
    ・同一墓地内で、違う区画への改葬の場合、改葬許可はいるのか。
    改葬とは、埋蔵した焼骨を他の墳墓又は納骨堂に移すことをいい、場所的な移動を伴う概念とされております。そのため、同一墓地内であっても、他の区画へ移すことは、改葬に該当し改葬許可証が必要となります(逐条解説書、第2条の解説)。ただし、そうした経緯が墓地台帳に明確に記録されていれば、(改葬許可証が出されていなくても)墓埋法の目的を損なうものではないと、多くの法曹関係者が示しております。
    ・焼骨を自宅に置いておきたい場合の改葬先は自宅でもよいのか。散骨の場合、改葬先は自宅でよいのか。
    自宅に安置したいとか、散骨をするために、現在の墳墓から焼骨を取り出したいというケースは、墓埋法が想定していない焼骨の持ち出しになりますので、改葬に該当しない行為になります。したがって改葬先が、墳墓、納骨堂以外の場合は、改葬許可証を交付することはできません。この問題については、墓地管理者、市町村の交付窓口において、様々な対応の仕方が考えられます。対応方法については、講習会テキスト「墓園の管理事務」において説明しておりますので、当該箇所を一読して下さい。
  • (3)土葬に関して
    土葬が法令や条例により禁止されているという誤解がありますが、墓埋法では、「埋葬とは、死体を土中に葬ることをいう」と規定し、土葬を想定した規定がされています。
    都道府県における墓地に関する条例・規則でも、原則として土葬を禁止するという事例はごく一部で、半数近くは土葬時の埋葬の際の穴の深さの指定や土葬禁止地域の指定を行っています。墓埋法で、「墓地」とはそもそも遺体を埋葬するためのものであって、これを適正に行うための手続きを定めているにも拘わらず、これが実質的に行い得ない現状、一方で、墓埋法が想定していなかった散骨をはじめ、様々な新しい葬法が、半ば公認されているということには矛盾が感じられます。
    今後、我が国に滞在しながら、死亡してしまう外国人が増えてくるでしょうが、宗教的な戒律で火葬が禁止されている場合もありますので、絶対数としては多くはないとしても切実な対応が求められている問題であります。

参照:Q4-46

Q6.[散骨の相談についての対応]に関する質問

散骨したいという相談を受けた際の対応の仕方についてご教示願いたい。また、埋蔵と散骨とはどこが違うか。 (市環境衛生課担当者より)

Answer

散骨は、散骨を推進するグループが、「節度をもって行えば違法ではない」とする法務省の見解を、散骨の合法性を裏付けるものとして、マスコミを通じて流布したことから、多くの問題点を抱えたまま実施されるようになりました。墓埋法が散骨を想定していなかったことは確かですが、埋蔵、分骨、改葬など、ごく一般的な葬法についてさえ、厳しい規制をしている以上、散骨について、野放しでも問題はないという考えは成り立ち難いというのが多くの法律家の考え方です。平成10年にまとめられた「これからの墓地等の在り方を考える懇親会報告書」では、「それぞれの地方の実状を踏まえて、地方自治体の条例で定めることが適当ではないか」と提言しており、実際に、条例を制定し、事実上散骨を規制するなどの対策を講じている自治体が多くあることはご承知でしょう。
しかし、墓地の管理者としては、埋蔵されている焼骨を、散骨を目的として取り出したいという申し出があった場合には、後日、問題が生じた場合、迷惑をかけない旨を記した念書、覚書のようなものを提出させることが必要でしょう。
散骨の許可証や証明書の交付を求められた窓口の対応としては、
① 問題となった場合には、「撒いた当人の責任によって対応しなくてはならない」ことを説明する。
② 散骨を希望する当人だけの問題ではなく、家族及び親族の了解も得た上で処理しないと、「一切の責任は、申請者が被ることになる。」ということを説明するべきでしよう。
なお、埋蔵と散骨との違いですが、墓埋法では、埋蔵について「焼骨を土中に埋める」とは定義しておりませんが、文化財保護法の第92条、第93条で、「土中に埋まっていると想定されるか、ないしはこれを包蔵しているものとして推認される場合」としており、かなり広義の意味を有しております。一方、散骨の際に、上から土をかぶせる場合は、焼骨の埋蔵に該当するとする厚労省の通達が出されておりますし、散骨と遺骨の「遺棄」との線引きも明確になっておりません。このように現状において、条例や規則等の裏付けの無いまま、散骨の許可証や証明書を発行すべきではないと思います。

参照:Q4-55


「墓地の経営・管理に関するFAQ」目次

1.墓地の計画、許可などを巡る問題


2.個人墓地に関する問題


3.墓地の管理等に関する問題


4.埋蔵・分骨・改葬などを中心とした問題


5.使用料・管理料の徴収、滞納管理料などに関する問題


6.使用権の承継や失効などに関する問題


7.無縁墳墓(墓所区画)の取り扱いに関する問題


8.埋蔵委託管理型(永代供養墓)に関する問題


9.墓埋法の基本に関する問題


10.墓埋法に係わるその他の問題


ページのトップへ戻る