平成28年度厚労科研費研究に伴う

「墓地の経営・管理に関するFAQ」

  FAQ記載の参照番号は、墓地管理士通信教育テキストの番号に準じております。


「墓地の経営・管理に関するFAQ」


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FAQ 1.墓地の計画、許可などを巡る問題


Q1.[墓埋法第26条における「みなし墓地」の管理と再貸付け]に関する質問

「墓地、埋葬等に関する法律」第26条における、いわゆる「みなし墓地」の管理者が、墓地区域内の整地を行い、その後空いたスペースに墳墓を設置するような場合、新たな許可が必要とされるのか。 (都道府県の職員より)

Answer

墓埋法第10条第2項が適用され、新たな許可が必要です。同項では「区域を変更しようとする者」と述べられていますから、仮に、全体の面積が変わらなくても許可が必要です。ご質問のケースでは、墓地内の整備にとどまらず、建てられる墳墓の基数も変更される内容なのですから、当然新たな許可が必要とされます。

参照:Q1-12

Q2.[共同墓地の土地所有権の当該墓地管理組合への委譲の可否]に関する質問

明治22年に登記変更(地目を「畑」から「墓地」)した集落の墓地がある。登記の名義は「MG氏外30名」となっている(「外」とされた30名について、具体的には不明)。 現在、墓地は東側に拡大しておリ(ほぼ1,000㎡)、そこはNA氏の所有地となっている。NA氏は4年前に亡くなっており、その遺族は当該地を手放したいと考えている。ところが、墓地は任意の組合によって運営されていることから、当該地の受け皿として適切か否か判断に迷っている。NA氏の遺族は行政(市)に譲り渡したいとの意向のようであるが、どう対応したらよいか。 (都道府県の職員より)

Answer

任意の組合となると、土地の譲渡を受け、権利行使をすることは出来ませんので、実際にはMG氏を組合代表者として、対応せざるを得ません。行政(市)が譲り受けるということも一案ではありますが、その場合は、あくまでも金員のやり取りを前提としない無償の受領でなくてはならないでしょう。何故ならば、既に特定の限られた受益者(墓地使用者)によって占められている土地を、行政(市)が有償で買い取ったということになると、既存の墓地使用者に対して便益を図ったことになってしまうからです。

参照:Q1-52

Q3.[公営墓地の十分な供給を事由とした民営墓地の規制]に関する質問

当自治体(地方公共団体)では、都市計画の中で住民の需要を満たし得る公営墓地を設ける計画を策定しているところであり、これを現実化させた場合、そうした墓地の計画を実施しさえすれば、その墓地をもって当該地方自治体(の住民)以外の申請者による新規墓地の経営を認めないという対応をすることは可能か。(市町村の職員より)

Answer

近年では、墓地用地の新規取得が困難なため、既設の公営墓地内の無縁改葬で空いた墓所区画なども含めた計画変更を行うことなどによって、どうにかまとまった数の供給がなされているケースが多い中、極めて有意義な計画であり、早急にその実現化が求められるとろであります。
そうしたことを踏まえ、幾つかの問題を指摘しておきたいと思います。

  • ①「当該地方自治体以外の申請者による新規墓地の経営を認めない」ということは、本計画が実現された後も、当該地方自治体の宗教法人、公益法人からの墓地許可申請は認めないのでしょうか。たとえば、当該地方自治体の少なからぬ住民が檀家・信者になっている宗教法人があり、その法人の登記所在地が当該地方自治体外にあり、活動の実態と法人所在地との乖離がある場合、ご質問の理由のみで、不許可処分をすることが妥当な判断として受け入れられるかどうかという問題が考えられます。
  • ②ご質問の市町村の行政区域の「広さ」は分かりませんが、ここで計画されている公営墓地の立地条件・場所によっては、「交通の便が悪いので、近隣にあった方が良い」というニーズも想定されます。「必要とされる希望者数に応じた墓地を供給している」という理由のみによって、不許可処分をするということが妥当な判断であるとして受け入れられるかどうかという問題が考えられます。
  • ③「当自治体(地方公共団体)では、都市計画の中で住民の需要を満たし得る公営墓地を設ける計画を策定している」とありますが、その計画は具体的にどういった内容なのでしょう。ある市では新たな大規模墓地を計画し、供給を始めたものの、いわゆる樹木葬墓地や合葬墓、石板を芝生にはめ込んだ状態のものが中心でした。たしかに需要(数)は満たしているのかもしれませんが、多くの住民が求めるお墓の形状、あり方に対応しているかどうか、事前にアンケート調査等により需要分析を行うことが必要と考えます。

参照:Q1-57

Q4.[名義上「公営」となっている集落墓地の整理]に関する質問

墓埋法以前からある公葬地(集落墓地)の取り扱いで悩んでいる。台帳上は市営となっていながら全く関与しないものや、寺院墓地であっても台帳は個人名のままとなっているものなど様々で、墓埋法第26条だけではこれらをどう整理したら良いか分からない。何らかの方向性だけでも示して頂ければ大変有難い。(市町村の職員より)

Answer

最もポイントになるのは、当該墓地を実質的に使用しているのは誰か、ということになります。こうした墓地が形成されるに至った背景の多くの場合、墓地近隣に集落が形成されたことが前提となっているはずで、こうした場合の墓地(墓所)使用権は、法律上、入会(いりあい)権的な性格を帯びたものと位置付けられることが一般的です。このような場合は、その集落では、行政的な性格を帯びた紐帯によって、各々の世帯が、ある種の社会関係を構築しているはずです。そうした社会関係における代表者や、主たる構成員に対して、墓地を管理する組合をつくるように働きかけては如何でしょうか。無論、何らかの動機づけ(モチベーション)を与えなくてはなりません。そこで選択し得る方策、制約は、地方公共団体によって様々でしょうから、その選択肢をあえてここで述べることは差し控えます。
また、ご質問では墓地の使用者と墓地がある土地の所有権との整合性については明らかにされていません。集落の共同名義になっているか、分筆はされていても、各々の所有者が墓地使用者と一致していればよいのですが、そうした集落や墓地使用者とは全く異なる者が所有者である場合には、これまで黙認していたものが、墓地の管理体制を整備することに対して抵抗感があり、思わぬ形でトラブルとなってしまうことも考えられます。
以上、個々の事案における状況が明らかではないため漠然とした回答になってしまいました。これ以上踏み込んで申し述べ難いことをご賢察下さい。

参照:Q1-58

Q5.[墓地の新規計画に対する反対運動の対応について]に関する質問

墓地の新規計画が明らかになると、次のような理由を挙げて、必ず反対運動が起こる。
行政には許可権限者としての裁量があるとしても、全国的統一的解釈があってもよいと思う。 (市町村の職員より)

Answer

①について 墓埋法は衛生法規であり、これに基づく各都道府県の規則・条例は衛生上の問題を充分に考慮したものとなっているはずです。したがって、申請にあたって、衛生上の問題なるものが生じること自体が考えられません。
②、③については、霊園側が、その都度、適切に対応すれば解決し得る事柄であり、これをもって不許可とするのは、脆弱な理由ではないでしょうか。
④については、その因果関係が証明されなくてはなりません。過去の事例では、その関係性が明らかにされたことはありません。
ご質問では、全国的統一的解釈を求めておられますので、墓地の新設等に関して、司法の場で争われた事案を取り上げることでこれに代えることとします。
結論から云いますと、ご質問のような理由で墓地建設に反対する主張に対して、裁判所は、「墓埋法第10条第1項は、墓地の周辺に居住する者個々人の個別的利益をも目的としてはいない。したがって、周辺住民は、墓地の経営許可の取消しを求める原告の適格性がない(墓地の有する公益性に対して、これを反対する側の主張や、法的な根拠、立場、利害関係を比較した場合、後者を思慮する余地は無い)」として、訴訟自体が取り上げられないか、もしくは敗訴というのが実情です。(例:最高裁判所判例(平成12年3月17日)の他大阪高裁、大阪地裁など多数あり) むしろ、許可をしなかった場合、それに合理的な理由が認められないと、行政側の敗訴となるか、もしくは適切ではなかったとして賠償させられる事案もあるほどです。

参照:Q1-73

Q6.[地元の寺から委譲された管理墓地について]に関する質問

昭和40年頃に、地元の寺より移譲された管理墓地がある。町では、設置、管理条例の制定を行なったが、当時、使用者台帳の整備・更新を行わず現在に至っている。
そのため、使用者の所在不明の区画が多く存在している。町所有の墓地であるが、区画の一部は隣接した民地につながっており、近年は敷地内に点在している立木の倒壊による墓石破損などを、町予算で補修せざるを得ない状況である。2年前に区画の現況図を作成したが、今後、この墓地の管理をどのように進めていくべきか苦慮している。今後の方向性についてご教示願いたい。(町住民福祉課担当者より)

Answer

地元の寺より移譲されたという経緯が不明であること、管理条例の添付がないことから、以下に述べる回答が的確と云えるかどうか分かりません。
現時点では、町が経営主体となっているようですので、立木の伐採、土砂崩れ等の復旧は町の責任で行うべきでしょう。また、隣接する民地との境界を明確にする責任も同様と云えます。但し、これらは通常は墓地使用者から徴収する管理料で負担すべきです(もちろん、大掛かりな復旧作業や境界柵の設置などの費用を全額賄えることはできないと思います)。しかし、使用者台帳の整備・更新を行わずに現在に至っているという状況から推察いたしますと、管理料の徴収もされていないのではないかと考えられます。
このまま推移しますと、益々墓地の荒廃化が進み、所在不明者も増加するでしょう。使用者台帳の整備や管理料の徴収、さらに無縁墳墓の整理などの課題は、今後、この墓地をどのように進めていくべきかを検討する大前提となりますし、当然、現使用者の協力なしには不可能です。そのような整備がある程度目処がついた時点で、市単独での運営が困難であるならば、将来は、「墓地管理組合」のような組織を作り、日常の運営・管理は、このような地縁団体に委託すべきではないかと考えます。

参照:Q1-93

Q7.[自治体所有の墓地の管理と合葬墓について]に関する質問

次の2点につきご教示願いたい。
(1)「ポツダム政令」により自治体所有となった墓地の管理について (2)合葬式墓地のあり方について

Answer

ご質問ごとに回答します。
(1)自治体所有の墓地の管理について

  • ①自治体の管理責任
    ご質問の内容だけでは、当該墓地の経営主体である貴市が、どのような問題について責任を問われているのか不明です。(前問Q6)の回答を参考にして下さい。
  • ②市の施策により墓地の地盤が沈下したと考えられる場合
    これは、本来は、自治体が負うべき責任ではなく、整地や土地改良等を行なった施工業者の業務の過失責任が問われる事案ですが、30年以上前の事柄ですので、工事の瑕疵があったことを立証することがかなり困難であることを考えると、修復・復旧等は自治体で行わざるを得ないのではないかと思います。
(2)合葬墓について
  • ①納骨後30年経過後合葬している根拠
    30年とする根拠は特にありません。おそらく、わが国の場合、「三十三回忌」をもって「弔いあげ」、「骨あげ」とし、故人の祭祀の区切りとされ、その後、その故人は「ご先祖様」するという慣習がありますので、こうしたことを根拠に踏まえてのことだと思います。ちなみに、当協会が把握している限りでは、20年としているケースが多いようです。これはおそらく、民法162条「所有権の取得時効」に規定されている「20年の間、平穏かつ公然に物を占有してきた場合には、占有者がその物の所有権を取得する」という考え方を踏襲するものだとも考えられます。ただし、この考え方も司法上適正と認められた厳密な意味での法的解釈ではなく、目安でしかありません。
  • ②生前に契約した合葬墓に、死後、誰が納骨するのか。
    この問題は、むしろ、契約者が考えておくべきではないかと考えますが、通常は、申請時に、申請者が死亡した時に焼骨の埋蔵を行う者を指定することが一般的ではないかと思います。これを「指定人」と称する場合もあります。ところで、ある市の説明資料には、指定人または身寄りの方が亡くなった場合には、指定人の代わりに、当該市が納骨しますと書かれてありました。ただし、申請者死亡の情報をどのようにして入手するのかについては触れられておりませんでした。

参照:Q1-94

Q8.[無許可で経営していた納骨堂の競売と焼骨の改葬]についてに関する質問

某宗教法人が無許可で納骨堂を経営していたことが、この宗教法人が破産した後に、破産管財人の弁護士からの相談を受けたことにより発覚した。当該施設には50基ほどの焼骨が残っており、破産管財人に対し、遺族に返却するよう指導しているが、破産法人の元代表役員に連絡がつかないことを理由に、非協力的である。今後、当該物件について競売が行われるが、仮に、当該物件を買い受ける者が出た場合、買受人は、無許可納骨堂の経営者となるのか。また、当該物件から、残っている焼骨を、適切に移動させる方法があれば、ご教示願いたい。
なお、破産管財人名義で、無縁公告を行い、焼骨を受け入れてくれる寺へ、改葬するという案もでたが、当該施設が無許可施設であるため改葬には当たらず、この方法は不可と考えるが如何か。 (市健康薬務課担当者より)

Answer

まず、破産管財人の弁護士からの相談を受けるまで、この事実が発覚しなかったことが問題です。このケースは、単に墓埋法違反だけでなく、農地法や都市計画法、建築基準法などの関連法令にも抵触しますし、さらには、使用者を募り、金員の受け取りを行っていたということで、詐欺罪での立件も可能であったと考えられます。しかし、現時点では、告訴する相手側が行方不明ということですので、ご質問に限定して回答します。
ご質問から判断すると、無許可の納骨堂を、納骨堂として競売に付すようですが、順序としては、残された焼骨を移すことが先決です。しかし、焼骨を他に移したとしても、墓埋法違反としての対応を目的として、当該物件は、納骨堂ではなく、単なる建造物としての競売となるでしょう。
ところで、残された焼骨については、一律に無縁焼骨として処理することはできないので、破産管財人名義による無縁公告を行い、縁故者が現れれば個別に処理し、最後まで残された焼骨は、墓埋法施行規則第2条2項1の「市町村長が必要と認めるこれに準ずる書面」を準用し、他の書類によって、無縁改葬手続きを進めることです。

参照:Q1-100

Q9.[埋蔵の定義と墓地・納骨堂の違いについて]に関する質問

墓埋法において、「納骨堂」とは、「他人の委託をうけて焼骨を収蔵するために、納骨堂として都道府県知事の許可を受けた施設」と定義されている。また、逐条解説書では、焼骨を収める方法の中で、「収蔵」とは、「埋蔵」以外のすべての方法をさすもの」とある。
ところで、昨今、「永代供養墓」と称して、カロートや棚等に、多数の焼骨を収める合葬式の構造物(小規模で建築確認不要)が見受けられる。当市では、「埋蔵」は、「地中に焼骨を葬ること」と理解しているため、このような構造物は「納骨堂」と判断し、許可申請を受けているが、「墓地」と「納骨堂」との区別において、明確な判断基準がない。
そこで、下記について、ご教示願いたい。
(1)「埋蔵」の定義について
(2)多数の焼骨を収める場合の「墓地」と「納骨堂」の区別について
(市環生活生課担当者より)

Answer

ご質問ごとに回答します。
(1)について
「埋蔵」、「収蔵」の定義に関する質問は、過去にも多くありました。元来、墓埋法は土葬を前提とした衛生法規でありますので、火葬が一般的になっている現状と乖離している面もあるかもしれません。法第2条では、「埋葬」の定義として、「死体を土中に葬ること」としていますが、「墳墓」の定義では、「死体を埋葬し、焼骨を埋蔵する施設」としながら、「埋蔵」を「焼骨を土中に埋める」とは定義していません。ただし、「埋蔵」については、文化財保護法第92、93条で、「土中に埋まっていると想定されるか、ないしは、これを包蔵しているものとして確認される場合」としており、かなり広義の意味を有しているものと考えられます。したがって、この定義によれば、地方によくある、地上式カロート(いわゆる陸カロート)も含まれます。一方、「収蔵」の定義は明らかでなく、辞書では、「収蔵」は、「取り入れてしまっておくこと」とされておりますので、「埋蔵」か「収蔵」かの区別は明確ではなく、「他人から委託を受けて焼骨をおさめる」施設であれば、「納骨堂」であると考えるのが妥当であろうと考えます。
(2)について
上記の考え方によれば、「墓地」と「納骨堂」の区別は明らかでしょう。焼骨の多少には関係なく、「他人の委託を受けて焼骨をおさめる施設」が「納骨堂」です。一方、「合葬式の墓地」については、明確な定義がありませんが、厚生省の「墓地経営・管理の指針等について」(平成12年12月6日生衛発第1764号)
において、「近年、承継を前提とせず、経営者に埋蔵及び管理を依頼する方式が、永代供養墓という名前で広がっている。これについては、確立された定義があるわけではなく、その実態は様々であり、個々の墓所で管理するもの、一定期間経過後に合葬墓に移すもの、初めから合葬墓に納めるもの等がある」と述べており、この通知では、これらを「契約約款」の観点から「埋蔵管理委託型」施設と称しております。実際、公営の墓地では、「合葬式墓地」とか「合葬式埋蔵施設」と称されております。したがって、これらの施設の呼称はともかく、施設の経営者に、焼骨の埋蔵とその管理を委託し、その対価を支払っているということから、「墓地」とは別の概念であり、施設ごとに経営許可が必要であることは云うまでもありません。

参照:Q1-102


「墓地の経営・管理に関するFAQ」目次

1.墓地の計画、許可などを巡る問題


2.個人墓地に関する問題


3.墓地の管理等に関する問題


4.埋蔵・分骨・改葬などを中心とした問題


5.使用料・管理料の徴収、滞納管理料などに関する問題


6.使用権の承継や失効などに関する問題


7.無縁墳墓(墓所区画)の取り扱いに関する問題


8.埋蔵委託管理型(永代供養墓)に関する問題


9.墓埋法の基本に関する問題


10.墓埋法に係わるその他の問題


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